原稿漏洩訴訟、清武氏に廃棄命令…東京地裁

読売巨人軍元球団代表の清武英利氏(64)が、読売新聞の大量の未掲載原稿を不正に入手し、海外在住の知人女性に漏洩(ろうえい)したなどとして、読売新聞東京本社が、清武氏に原稿の廃棄や損害賠償などを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。
東海林(しょうじ)保(たもつ)裁判長は、清武氏の著作権侵害を認め、原稿の複製・頒布の差し止めと廃棄に加え、30万円の賠償を命じた。
問題となったのは、巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏らに関する原稿で、本社運動部記者が、100回以上の連載ができる内容と分量を目指して作成し、部内の記事編集機に保存していた。
清武氏は本社で運動部長を務めたが、球団代表就任後の2010年12月、当時巨人軍に出向していた運動部長時代の部下からこれらの原稿データを入手し、シンガポール在住の知人女性に無断でメール送信していた。
この原稿について、清武氏は「インタビュー内容のメモが大半で著作物とはいえない」などと主張したが、判決は「記者の創意工夫が認められ、将来的には読売新聞の記事として発表することを予定して作成されたもので、原告の著作物である」と認定。本社と無関係の第三者に送信した清武氏の行為は著作権(複製権)侵害に当たると判断した。
また、清武氏は「原稿は現在所持していない」とも主張したが、判決は、清武氏が、巨人軍を解任・解職後の12年8月、出版社「ワック」のオフィス複合機で球団文書をスキャンしながら、その経緯を明確に説明できていないことなどを理由に、複製・頒布の差し止めの必要性があると指摘。さらに、原稿を記録したコンピューターファイルなどの磁気媒体や、それを印字した紙媒体の廃棄も命じた。
一方、本社は、「原稿は営業秘密に当たる」と主張したが、判決は「一部については公表されている」などとして、営業秘密の不正取得は認めなかった。また、ワックでの保全手続きで見つかった原稿(紙媒体)の引き渡しも求めたが、判決は、対象物件があったとする証拠がないとした。
読売新聞グループ本社広報部の話「新聞社が紙面で使うことを予定して厳重に保管している原稿を無断で第三者に送信した清武氏の行為を明確に違法と認めたのは、当然と考えます」

(平成27年2月27日読売新聞オンライン版より)

 

この件、まだまだ場外乱闘が続いてますね。

以下、実はビジネスをされている個人の方にも企業経営者の方一般にもかかわってくるお話なんです!

今回紙面から把握できる法律上の論点は2つ。

  1. 記者がインタビュー時に作成したメモは「著作物」にあたるか
  2. 清武氏が持ち去った記事の内容は読売新聞社の「営業秘密」として保護に値するか

1.記者がインタビュー時に作成したメモは「著作物」にあたるか

これについてはその内容に記者の創意工夫が認められるとして著作物にあたると認定されました。記者が著作権者になるということです。記者が作成した成果物のインタビュー記事も当然著作物に当たります。

最近自分のwebページに自分の新聞や雑誌でのインタビュー記事などを転載する方は多いことでしょうが、「著作物」である以上これをそのまま転載すると記者の著作権を侵害するおそれがあるということです。具体的にはインタビュー記事の作成過程から判断することになりますが、よほど発言の「丸写し」といえる内容でもない限り記者の著作権侵害が認められる可能性は高いといえるでしょう。

少なくとも記者に無断で至るところに記事へのリンクを貼りまくったりすると、後でトラブルの元になりそうです。注意が必要ですね。

2.清武氏が持ち去った記事内容は読売新聞社の「営業秘密」として保護に値するか

記者の作成したメモが不正競争防止法上の「営業秘密」にあたるとすると、損害賠償や営業秘密の廃棄の請求が可能になります。「営業秘密」の要件は以下の3つです。

  • 有用性
  • 非公知性
  • 秘密管理性

今回は記者のメモの一部が既に公開されていたということで「非公知性」の要件が欠けていると判断され、営業秘密に当たらないと判断されました。

一般の企業でいえば、開発中の商品の情報などはもちろん、顧客カルテなども営業秘密に当たり、従業員によるその漏えい行為に対して損害賠償や機密データの廃棄を請求できる可能性があります。

ただしここで気を付けなければならないのは「秘密管理性」の要件。あなたの会社の機密情報が不正競争防止法できちんと保護されるためには、機密データの記載された物を施錠された金庫などで厳重に管理する、機密データをパスワード等で厳重に管理する、秘密管理担当者を選任して秘密保持契約を結ぶ、従業員に対して事前に秘密管理教育を施すなどの物理的・技術的な秘密管理対策はいまや欠かせません。

雇用の流動化進展に伴いドライな考え方の従業員が増えているんでしょうか。営業秘密漏えいによる不正競争防止法違反事件は増加傾向です。みなさんくれぐれもお気を付けください。 

 

コラム:企業法務

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