区分所有法改正シリーズ① ~専有部分の使用・保存請求~
専有部分または共用部分を保存または改良するために、ほかの区分所有者の専有部分への立ち入りについてこれまでどのようなルールが定められていたのでしょうか。また、今回の区分所有法の改正によってそのルールはどのように改められたのでしょうか。
改正前のルール
たとえば、ある専有部分に上階からの漏水が発生した場合には、当該漏水の原因の調査や修理のため、上層階の共用部分や他の専有部分に立ち入る必要があります。しかし、 専有部分についてみれば、当然当該専有部分の区分所有者の承諾がなければ、立ち入って調査や修理を行うことはできません。そのためにこれまでも、区分所有者は、専有部分または共用部分を保存しまたは改良するために必要な範囲内において、ほかの区分所有者の専有部分または自己の所有に属しない共用部分(ほかの区分所有者の専有部分等) の「使用」を請求することができると定められていました(専有部分の使用請求権・立入受忍義務。 旧6条2項前段)。
改正前のルールの問題点とは
もっとも、このように従来区分所有法上認められていたのは、専有部分に対する「使用」の請求です。つまり裏を返すと、他の区分所有者の専有部分等にいかなる不具合が生じていても、区分所有者の側から修繕などの不具合の補修等是正を求めることは法律上認められていませんでした。しかし、漏水が他の区分所有者の専有部分内の不具合に起因するような場合、被害の継続や拡大を防ぐためには、他の区分所有者が専有部分等に立ち入って使用するだけではなく、専有部分内の設備の不具合の補修も是非とも必要でしょう。
改正後のルール
そこで今回の改正によって、区分所有者は他の区分所有者の専有部分等について、「使用」を請求するだけではなく、必要な範囲内において、「保存」の請求をすることができる旨定められました(保存請求権。新6条2項前段)。漏水が他の区分所有者の専有部分や専有部分内の設備の不具合に起因するような場合には、専有部分等に立ち入って使用することを請求することができるだけでなく、他の区分所有者の専有部分や専有部分内の設備の不具合の補修を請求することができるようになりました。請求したにもかかわらず他の専有部分の区分所有者の任意の協力を得られない場合には、訴訟手続を通じてこの保存請求権を実現することができます。
管理不全専有部分管理の申立て手続きとの関係
>なお、今回の改正によって専有部分の管理が不十分な場合については別途管理不全専有部分管理の申立ての制度(非訟事件手続)が創設されていますが (新46条の8、88条) 、当該制度と専有部分の使用・保存請求の制度の2つの制度は併存することになり、必要に応じどちらの手続きを選択することもできます。
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